下手の横好き(馬と獅子が好きです)

主に西武ライオンズ、競馬のことを主に書いています。

【投手陣問題】奪三振が少なすぎる問題

西武は、一昨年&昨年でリーグ連覇を果たしましたが、
史上初の「チーム防御率最下位での連覇」
という珍事となりましたね。(しかも12球団最弱の投手陣)


打撃陣は出塁率が4割もあれば上々の分野であり、
一方、投手陣は6割以上の確率でアウトにできます。
また「何を投げるか?」の決定権は投手陣にあり、
打撃陣は来る球を迎え打つ受け身でもあります。


それ故、基本的には投手陣の方が打撃陣より有利であり、
チーム力を強化するには、
投手陣の地力をアップを図って基盤の頑強にされたいですね。
もちろん、得点を挙げられない貧打すぎるのも問題ですが。


西武投手陣の場合、
与四球数が多くて自滅しやすい面が多々見られます。
当然、与四球数の低減は喫緊の課題でありますね。


ただ、与四球をゼロにすることは不可能ですから、
与四球を発した後の対応もかなり重要です。


与四球の数(率)なら西武よりソフバンの方が多いです。
しかし、ソフバンの場合西武と比して
出塁を許しても失点を許しませんね。


出塁させた走者を生還させなかった割合LOBでも
西武が71.2%に対して、ソフバンは75.8%です。


与四球に関する獅子と鷹の比較は、
以前、本ブログでとりまとめているものですが、
よろしかったら、詳細はこちらをどうぞ、ご参照下さい。


ソフバンとの違いの一つについては、
奪三振数の差が挙げられますね。


確かに三振を奪えるか?否か?
与四球等で出塁を許した場面で大きく左右します。


ただ、西武投手陣の場合、
比較対象がソフバンに限らず、他のパ5球団と比して、
出塁の有無にかかわらず、奪三振数が少なすぎる問題
投手陣弱体化の要因の一つ
になっていますね。


【1】奪三振に係るチーム成績(与四球は参考)


西武のチーム奪三振数が全体で875個しかなく、
ソフバンと285個も少なく、ハムと171個も少なく、
他の3球団とは約210~240弱の個数も少ないです。
さすがに他球団より200個以上少ないのは少なすぎです。


奪三振率(全体)で見ると、ソフバンが8.2もあり、
他4球団が7.4~7.8を示していましたが、
西武の奪三振率は6.1と低すぎです。


確かに一昨年(2018)と比べると、
153個の三振を奪った雄星
いなくなったことは大きいです。
しかし、雄星の分を抜いた場合の
一昨年(2018)の奪三振率は6.5ですから、
昨年(2019)の6.1はそれよりさらに低かった
ということですね。


すなわち、
昨年は、雄星の有無に関わらず
奪三振率がさらに低下している
ということが大いに問題にもなっています。
(ただでさえ悪かったのにさらに悪化傾向)


空振り三振と見逃し三振で見比べると、
楽天やロッテは見三振が多いので、
見三振でも差をつけられています


楽天の見三振が多いのは、
岸などが見三振数を稼いでいるからですね。
(岸の場合、全体の38.4%が見三振)


しかし、ソフバンと比較すると、
見三振数はそう大きく変わりはありません。
空三振数が圧倒的に大差があり、
それだけ西武は空振りが奪えない
ということが伺えます。


また先発、リリーフ(救援)で分けて見てみると、
先発<リリーフの傾向は良いんですが、
西武のリリーフ陣が他球団の先発陣より奪三振率が低い、
西武の先発陣はさらに低すぎる、という現状ですね。


奪三振数/与四球数の比も
他球団は2.2~2.7に対し、西武は1.8と低すぎます
当然、与四球の多い鷹と比しても、
西武は与四球後も耐えられませんね。


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では、奪三振数を増やすには?
特に、西武の場合、空振りを増やしたいです。


チームの空振率は、パの中で断トツ低いですし、
被コンタクト率は、パの中で断トツ高いです。


当然ながら、空振率や被コンタクト率は
奪三振率に響いている傾向が見られています。


【2】チームの奪三振率と被コンタクト率・空振率
赤色の四角印は西武以外のパ5球団を示す)

三振(空振り)を今より多く奪うには、
まずすぐに思いつくのは、
ストレートの球速アップですね。


まあ、球速アップは、言うは容易く、
実現するはそう簡単ではないですけど。


ストレートの平均球速は、
ソフトバンクが145.1km/hとパ・リーグで1位です。
(12球団では、DeNAや広島がソフバンを上回ってます)


また50イニング以上を投げているパの個人を見ると、
球速と奪三振率の関係は、
何となく右肩上がりの雰囲気が見えるものの、
バラツキが大きく、相関係数も低い(R^2で0.37)ですが、
少なくとも、
147km/h以上なら奪三振率は8以上あったことは伺えます。


【3】パ個人のストレート平均球速と奪三振率
(50イニング以上の投手64名を対象)

ただし、個人別で見れば、145km/hでは
奪三振率も5~11の範囲でばらついていますね。


基本的に球速アップも重要ですが、
それだけではなく、その他の要素も絡んできますね。


なお、チームのストレートに関する平均球速は、
ソフバンが145km/h以上とパ・リーグで1位であり、
2位がオリの144km/hでありますが、
西武も含めた他4球団は143km/h前後でそう差がありません。
西武もリーグでは4位につけております。


なお、下記は、チームにおける
ストレートの平均球速ストレートの投球割合(頻度)
またチェンジアップ、フォーク、カーブ、シンカーと
縦方向に変化する(落とす)変化球の投球割合(頻度)を整理しました。


【4】チームの直球平均球速、
 直球や縦変化球の投球割合(頻度)
赤色の四角印は西武以外のパ5球団を示す)

※ロッテのチェンジアップの投球割合が1.5%と低すぎます。
 しかし、個別でチェンジアップの投球割合を見ると、

 土肥が19.3%、ブランドンが9.5%、涌井が8.9%
 有吉が5.3%、松永が2.0%であり、あとは0.1%以下であり、
 チーム合計で投げている投球数にすると少ないと考えられます。
 過去3ヶ年でも似た数値をマークしていたので、
 またそれがフォークの方でカウントされていたとしても、
 ここでは「縦方向変化球」として合計した値で見るので
 基知見(最後に示す出典を参照)で整理されたデータをそのまま使います。


ストレートの平均球速奪三振率(下グラフ)を見ると、
球速4位の西武の奪三振率が低すぎるので
そのプロットが沈む形になっています。


一応、西武以外のパ5球団(赤色の四角印)で
ストレート平均球速と奪三振率との相関を見ると、
何となく右肩上がりの傾向が見られていますが、
球速が最も遅いのに奪三振率がそこそこのロッテの影響により
相関係数も低いですね。


ストレートの投球割合奪三振率を見比べると(上の左図)
球速と同様に、西武のプロットが沈んだ形ですが、
西武以外のパ5球団(赤色の四角印)で
ストレート投球割合と奪三振率との相関を見ると、
右肩上がりの傾向が見られております。
平均球速との関係よりも、
相関係数も高く、相関性も見られそうですね。


とは言っても、当然、
ストレートが多すぎれば良いというものでもない
とは思います。
もしストレート一辺倒で投げるならば、
単調になりやすいので(打者も慣れるので)
球速等の他の要素も欲しいですね。


次ぎに縦方向の(落ちる)変化球の投球割合
奪三振率を見比べると(上の右図)、
西武は縦方向の(落ちる)変化球の投球割合
他球団と比して、少なすぎるので、
奪三振率との相関が十分見られています。


相関式に関しては、
二次曲線のような変化をしていたので
青色線では二次関数で示しています。
一応、一次関数の線形では緑色線で示しています。


ただ、西武のプロットが飛び抜けていますから、
西武以外のパ5球団(赤色線)でも確認してみても、
縦方向の変化球の投球割合と奪三振率の相関
見られています。


しかし、上記【4】では、奪三振率と
ストレートの投球割合や平均球速
縦方向変化球の投球割合の相関が見られていますが、
個人成績を見ると、
上記【3】のようにバラツキが見られやすくなり
相関性が低下しやすくなります。


またチーム成績で見ても、
今年は上記【4】のように相関性がたまたま見られていますが、
そうでなくバラツキが見られる年もあり、
例えば、過去3年で見ると、
バラツキが大きくなって相関性が低下しています。


すなわち、
球速がアップすれば奪三振が増えることもあれば、
球速がアップしていなくても、
落ちる球が増えて奪三振が増えることもあれば、
または、
ストレートと変化球の巧なコンビネーションにより
奪三振が増えることもあり、
そのようにバラツキが見られることは、
個々に三振の奪い方が異なるから生じるから
(奪三振の増やし方は個々で異なるから)
とも言えます。


ただし、上記【4】から少なくとも
チームとして見れば、西武投手陣はやはり
縦方向の落ちる変化球の投球頻度が他球団より少ない
ということは言えますね。
その傾向は、過去3ヶ年を見ても伺えます。


ということは、投手全員に通じる話ではないでしょうが、
上記【4】を見ると、西武全体で少なくなっている
縦方向の落ちる変化球の投球頻度を増やしたい、

それが対策の一手になる可能性がある
ということが言えそうです。


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これらを鑑みると、個別対応になるでしょうが、
奪三振率をアップさせるためには、
ストレートの球速をアップさせたり、
縦方向の落ちる変化球の投球頻度を増やしたり、
〇逆にストレートの投球頻度を増やしたり、
〇またストレートと変化球の
 巧なコンビネーション
で配球を考えたり、
投げる球の質を高めたり、
 回転数を増やすとか、変化量を増やすとか
 (例:ストレートのホップ変化量を増すなど)
あれこれ考えられます。


例えば、岸の場合、楽天へ移籍した2017年に
西武時代より奪三振率を大きく高めました。


そこで、その奪三振率をアップさせた岸について、
参考にして見てみましょう。


【5】岸(2015~2017年)の奪三振率等

奪三振率が2015~2016年が概ね7.2~7.4でしたが、
楽天に移籍した2017年が約9.7とアップしていました。


岸の場合、コース一杯にストレート等を投げ込んで来て
打者に手を出させず、見三振を奪うケースが良く見られます。
ある意味、これが岸の真骨頂でもあるわけですが。


楽天移籍後の2017年を見ると、
奪見三振率を増やしています。
コース一杯に投げ込んでくるので、
ストライクゾーンに投じた割合が増加していることが
響いている可能性が考えられます。


ただし、奪空三振率も増やしていますね


その他の結果を見ると、
ストレートの平均球速については、
その3年間で横這い状況であり、
球速アップは見られませんね。


一方、移籍前後で大きく変わっているところは、
ストレートの投球頻度(割合)の増加ですね。
(16年51.9%→17年51.0%→17年57.0%)
またカーブの投球頻度(割合)の増加も見られます。
(16年13.8%→17年14.0%→17年16.9%)
それらの分、
スライダーの投球頻度(割合)が減っています。


また2016年と2017年の2ヶ年を対象に見ると、
2ストライク後(追い込んでから)の球種割合は、
次のとおり、ストレートとカーブを増しています。


        2016年  2017年
ストレート   54%  59%
チェンジアップ 18%  18%
カーブ     13%  15%
スライダー   15%   7%


チェンジアップはやや減少していますが、
どちらも岸の武器になっている
チェンジアップとカーブが似た頻度になり、
どちらが投げ込まれるか?読みにくくなり、
さらにストレートを増やしたことにより、
移籍以降、ストレート、チェンジアップ、
カーブを巧に組み合わせた配球
西武時代より工夫されるようになった可能性

考えられます。


なお、2016年と2017年の2ヶ年を対象に見ると、
球種別奪空振率については、
チェンジアップの奪空振率がアップしています。


        2016年  2017年
ストレート     8.5%    7.9%
チェンジアップ 13.7%  18.3%
カーブ     11.0%  11.4%
スライダー     6.8%    6.3%


もちろん、岸の奪三振率アップは、
球速アップは関係なく、
優れた制球力が基盤になっていることは伺えます。


ただし、一般的に与四球率奪三振率を見ると、
バラツキが多くて相関は見られていません。


【6】与四球率と奪三振率
(パ・リーグの50回以上投球の投手を対象)

確かに与四球率が高いように制球力が微妙であるならば、
三振を奪うなら球速が速かったりする方がベターでしょう。


ただし、ソフバンの松田遼とか、
ロッテの種市やボルシンガー、チェン、酒居などは
与四球率がそこそこ高いわけですが、
ストレートの平均球速は今井や光成より遅いですけど、
奪三振率は今井や光成を上回っています。


もちろん、
球速や制球力が優れていることがベターではあるため、
球速や制球力に磨きをかけることは大事なわけですが、
球速や制球力のアップはなかなか簡単でもない現実もあります。
奪三振率を向上させるための道のり(手法)は、
球速や制球力のアップの道だけではなく、
他にも道はありそうですね(球種構成・配球等)。


また、前述で岸の事例を挙げましたが、
あくまで、それは一例にすぎず、
岸の事例が全ての投手に当てはまる
というものではありません。


奪三振率アップに向けて
何を伸ばすか?何に着目していくか?を含め、
コーチや裏方らと二人三脚で
個別に各選手に合った対応を
していくしかないわけです。


しかし、いずれにしても、チームとして
奪三振率の底上げ

図られることは急務であることは
西武にとって、
不動の超重要課題でありますね。


ちなみに、過去6ヶ年における
西武の奪三振率
は次のとおりです。
過去6ヶ年で見ても低いですね。


2014年6.4、2015年6.2、2016年7.2、
2017年6.7、2018年6.8、2019年6.1



※上記データの出典


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