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【現役ドラフト】もし制度を導入するのであれば、色々制約を設けないと、本来の目的から乖離することも十分あり得るのでは。制度導入に伴う影響評価を適切に講じた上で導入の是非を検討すべき。

 最近、選手会が成立させたい『現役ドラフト制度』(仮称・ ブレークスルードラフト)。昨年は秋山と丸が担がれて要望を出しており、今年も要望が出ました。しかも『来年導入』を要望しました。


 基本的には球団内で出番に恵まれず、他球団に移籍すれば、チャンスを活かせるかもという半端な選手らを救済するシステムですね。MLBでは前々から行われており、韓国でも導入されてます。


 ただし、アメリカではメジャーとマイナーが連携していても、互いは別球団であり、メジャー契約ができるのが40人しかいません。


 また、韓国の場合は、「選手のため」ではなく、10球団目になる新しい球団が加入したけど、その新球団が1〜2軍を合わせて50〜60人に達する選手団規模には大いに足りない状況だったので、それを改善する対策の一つとして2011年に導入されたようです。その後、2年に1度の頻度で行われています。


 一方、日本は一軍&二軍が一体となった同一球団であり、その支配下選手が70人もいます。たからと言って、現役ドラフトを支配下選手より下の育成選手だけでやっても意味はなく、日本に導入するならばその支配下70人の中の二軍レベルの半端な選手が対象になりますね。
 そのあたりは日米の大きな差です。二軍もマイナー球団のように上に選手を送り込むことが主目的ですが、マイナー球団はメジャー球団と違う球団ですからメジャーに直接響かなくとも、一軍&二軍が一体化している日本ではダイレクトに響きます。


 昔、日本でも埋もれている選手救済のために、トレード会議やセレクション会議とかありましたが、市場に揃うは使えないカス選手ばかりとか、問題もあってあっさり一瞬で消えました。


 それでも『半端な選手救済』の大義のために『現役ドラフト』を敢行したら、良くも悪くも『どうなるのか?』てすね。


 まず制度の実施時期について、シーズン途中は絶対に避けたく、そこはトレードで対応されたいです。やるならばシーズンが全て終了して落ち着いてからやるべきですが、年内には各チーム戦力は固めておきたいです。
 すると、戦力外通告、FA、トライアウト、その他諸々あって忙しいですが、時間の問題は頑張れば良いので主問題にはなりません。FAも交渉や決断に時間をかけさせず11月前半には全て決着させれば良いので。


 次は今年2月の記事であり、現役ドラフトについて、その記事の中で選定基準を仮定し、その仮定に基づいて対象選手を列挙しています。ただし、これはあくまでその仮定に基づいての例え話です。

【対象条件】
■高卒プロ入りは5年以上、大学・社会人、独立リーグ出身は4年以上在籍(※移籍した選手は移籍後の球団の在籍年数が上記以上)
■過去に1試合でも一軍の公式戦に出場経験あり
■昨シーズン、一軍公式戦出場試合数が投手は5試合以下、野手は10試合以下の選手
■一軍最低年俸(1500万円)未満(日刊スポーツ参照)
■外国人登録の選手は除く
■コーチ兼任の選手は除く


 これらの仮定の条件を満たした主な選手を12球団別に抽出すると、下記の選手が候補に挙げられています。


<パ・リーグ>
●西武
中田祥多(捕手・高卒12年目)→戦力外
永江恭平(内野手・高卒8年目)
水口大地(内野手・独立リーグ出身7年目)
金子一輝(内野手・高卒6年目)→戦力外


●ソフトバンク
川原弘之(投手・高卒10年目・育成契約)
笠原大芽(投手・高卒7年目・育成契約)→戦力外
島袋洋奨(投手・大卒5年目・育成契約)→戦力外
江川智晃(外野手・高卒15年目)→戦力外

釜元豪(外野手・高卒8年目)
真砂勇介(外野手・高卒7年目)


●日本ハム
中村勝(投手・高卒10年目)→戦力外
森本龍弥(内野手・高卒7年目・育成契約)→戦力外

谷口雄也(外野手・高卒9年目)
岸里亮佑(外野手・高卒6年目)→戦力外


●オリックス
塚原頌平(投手・高卒9年目・育成契約)→戦力外


●ロッテ
阿部和成(投手・高卒12年目)→戦力外


●楽天
今野龍太(投手・高卒6年目)→戦力外
下妻貴寛(捕手・高卒7年目・育成契約)


<セ・リーグ>
●広島
白浜裕太(捕手・高卒16年目)
岩本貴裕(外野手・大卒11年目)→戦力外
高橋大樹(外野手・高卒7年目)


●ヤクルト
田川賢吾(投手・高卒7年目)
岩橋慶侍(投手・大卒6年目)→戦力外


●巨人
高木京介(投手・大卒8年目)
田中貴也(捕手・大卒5年目)
和田恋(外野手・高卒6年目)


●DeNA
飛雄馬(内野手・社会人出身8年目)


●中日
鈴木翔太(投手・高卒6年目)
阿知羅拓馬(投手・社会人出身6年目)
桂依央利(捕手・大卒6年目)
加藤匠馬(捕手・大卒5年目)
三ツ俣大樹(内野手・高卒9年目)
溝脇隼人(内野手・高卒7年目)
近藤弘基(外野手・大卒5年目)→戦力外
友永翔太(外野手・社会人出身5年目)→戦力外

井領雅貴(外野手・社会人出身5年目)
遠藤一星(外野手・社会人出身5年目)


●阪神
歳内宏明(投手・高卒8年目)→戦力外
守屋功輝(投手・社会人出身5年目)
横山雄哉(投手・社会人出身5年目・育成契約)
小宮山慎二(捕手・高卒16年目)→戦力外
荒木郁也(内野手・大卒9年目)


 あくまで仮定の選定ですが、その前提の仮定条件も、現役ドラフトの目的を鑑みて『出番がなく中でくすぶっている選手』という観点からは、そうあながちおかしくない「対象条件」とも言えます。


 今シーズン始まる前にそこで選ばれた選手42名の顔ぶれを見ると、シーズンが終わってみたら17名(約4割)が『戦力外』になっています。中日を除けば、32名のうち15名がクビです。いずれにしても『戦力外』になった選手が多いですね。特にパ球団では。


 戦力外になるのならその前に現役ドラフトで他で出番のある所へ移籍させる救済になったかもしれない、とも思えますが、それなら戦力外になってからも、他に引き取り手はありますね。
 残念ながら、自分の実力不足でくすぶっているという選手も多く、正直、現役ドラフトでもなかなか厳しい、なかなかそう簡単に『救済効果』が見られるものでもなさそうというのも事実と思います。対象条件を緩めないと効果は上げにくそうです。


 でも、対象条件を緩めれば、色々と制約条件もつけないと、後述する心配事は嵩むかもしれません。


 いずれにしても、12球団で格差はあって成績にも差はありますが、とは言っても、そこまで大きな差(例えば球団Aの一軍は球団Bの二軍レベルとか)はあるわけではないので、補強したかったポジションに上手くハマることはあっても、基本的に半端な選手はどの球団に行っても半端な選手です(移籍して覚醒すれば別ですが)。


【想定される事項①】
 救済するつもりでやってみたが、結局、救われる選手(効果)はあまり無かった、なんてことも。
1人や2人成功して、それが神話の如く語られてそれがいつまでも効果宣伝に使われ続けることもありますが(最近ではハムの大田の例/でもそんなに良い話はそう多くない)。下手すれば、翌年には「戦力外」になっていることも多々ありそう。


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 でも、球団側から考えると、入団以来、何年もかけて育て上げたところで、移籍されてしまうのは大きな痛手です。下手したら他球団の戦力アップのためにお金や時間、手間を投じているようなものになりかねません。
 また、入団して基礎から作り直してなんていう選手は、モノになるには何年もかかりますが、それを持っていかれたら、当然、『何のための育成?』となってしまいます。


 アメリカのマイナー球団は育て上げて上に送り込めば、あまり良い表現ではないですが、メジャー各チームで各々傘下に入ってますが、経営は別であり、育てて『売却』してナンボが商売でもありますから、現役ドラフトで10万ドルももらえれば、育てた時間も金も無駄にはなりません。
 一方、日本の二軍も上に送り込むために育成しますが、全ては一軍が勝つためであり、同一球団ですから、育て上げて『売却』は商売(球団経営)の目的から異なってきます。中には、『選手売却ビジネス』を積極的に打って出てくる球団も出てくるかもしれませんが。


 現役ドラフトの対象になるまでの年数制限など長く設定できず、入団して3~5年とかの縛りになれば、球団側は、当然、育て上げて奪われると感じてしまいますから、そうなれば、何年もかけて育てるのは損なので新人採用では、1~2年でモノになる即戦力タイプの選手ばかりを集め、モノになるのに3年以上かかりそうな新人選手獲得は避けられそうですね。
 ましてや、現役ドラフトに育成選手も対象にするか?はありますが、三軍を作って悠長に育て上げるというのも廃れやすそうですね。下手したら、育成枠というのは、FA人的補償のプロテクト裏技外しに使われることがメインになり、本来の目的から逸れてくるかもしれません(故障者の野戦病院化は残るでしょうが)。


 とは言っても、現役ドラフトの対象になるまでの年数制限を6年、7年、8年と長く設定してしまえば、正直、市場に出るのは、戦力外寸前のカス選手ばかりとなり、過去のドラフト会議、セレクション会議と同様に続きません。


 なお、現役ドラフトが導入されている韓国と日本の「育成選手」を見比べると、日本では最低年俸240万円が決められていますが、韓国では最低年俸の設定がありません。
 昨年2018年のにおける育成選手の平均年収は、日本が約330万円に対して、韓国は約120万円であり、日本の3~4割です。
 当然、物価の違いはありますが、主要都市における月額賃金は日本が約29万3千円に対し、韓国は約20万6千円ですから、日本の約7割ですね。



【想定される事項②】
 育て上げて流出する懸念から、何年もかけて育成することを避けるようになり(育成選手は採用しないなど)、即戦力型の新人ばかり集める球団が出てくるかも?


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 また、半端な選手救済のための制度なのに、行った先でも同じように二軍で「待機する超控え」のままでは意味を成しませんね。そこは、MLBのように「獲得した球団はしっかり上で使い続けること」というルールを設けるか?はありますね。


 ただし、MLBの場合、ロースター枠に入れ続けること、メジャー契約をすることであり、40名の中に入れればいいわけですが、NPBの場合、一軍&二軍の枠であり、一軍枠にしてしまうと29名の中に入れなければならず、獲得して使う球団側はメジャーよりその選手の使い方が難しいルールになってしまいます。


 でも、その『獲ったら使う』ルールを設けなければ、制度の効果向上もありますけど、年俸がそう高価ではないですから『使い捨ての駒』の如く、あさるように奪いまくる(バーゲンの買いまくり)する球団が出てくるでしょう。
 もちろん、獲得できる人数制限を設ける必要があり、そうすればその問題は少し緩和しますが、買いあさりたい球団ですから、『使い捨ての駒』扱いの考え方は変わらなく、制度が目的する選手救済どころか、都合の良い使われ方をされてしまう可能性は十分考えられます。


 外国人の話なので、少し違ってきますが、巨人がロッテから奪ったものの、結局、余らしてしまっていたクルーズは、2017年に楽天へ移籍しました。でもそれは茂木が故障をしてしまったため、茂木が離脱する二週間の活用のためだけに獲得したので、茂木が戻って用が済んだら、そのまま『ポイ捨て』されましたね。
 この例え話とは違いますが、例えば3人まで獲得可能とした場合、年俸も安価なので、3人獲得して補償金を支払っても最大数千万円の支払いで済むから、とりあえず何でも良いから3人まで獲得しておき、パっとしなければ使うことなく「ポイ捨て」もありですね。
 中にはトレード要員の駒として、獲得してすぐ放出してしまうかもしれません。


 それを考えると、制度の目的(半端選手の救済)も踏まえ、『獲得したら使うこと』ルールは必要と思います。


 2011年に現役ドラフト制度を導入した韓国の場合、獲得したら使うこと』ルールは設けていません。もともと現役ドラフト制度の導入の目的が新球団の選手を集めること、にありましたから当然と言えば当然です。獲得した球団はその選手を縛りなく自由に使えます。ただし、韓国の場合、現役ドラフトを行うのは2年に1度の頻度です。


【想定される事項③】
 
『獲得したら使うこと』ルールを設けなければ、『使い捨ての駒』扱いの考え方をする(都合の良い使い方ばりする)球団が現るかも。獲得人数制限も設けないと、バーゲンの買いまくりをする球団も現るかも。


 結局、前述の【想定される事項②】と絡めて考えると、
〇育てても奪われるなら損。
 育成にあまり力を入れず、
 新人は即戦力を集めよう。
 ダメならポイ捨てすればいいから。
〇獲得するのも、FAと違って
 年俸がそう高くないので
 ダメならポイ捨てすればいいから、
 バーゲンの買いまくりしてしまおう!


こんな感じで、
育成に力を入れず、
他球団から買いまくって

戦力を整えよう!
という球団が現れることを促すかもしれませんね。


もし現役ドラフト制度を導入するのであれば、
色々制約を設けないと防げません。


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 おそらく現役ドラフト制度が導入されれば、獲られた球団への補償は、金銭によるもののみになると思われます(人的補償は無し)。
 前述のような例えの対象選手の選定ケースの場合、1球団当たり平均で3~4名が対象になります。中日には10人もいました。当然、そこを根こそぎ持って行かれる可能性もあります。
 確かに一軍では使っていないから、持って行かれても響かないでしょ、と言われても、もしレギュラーが負傷したりした場合、痛手になりますし、また一番困るのは、二軍戦で「人数不足になりました」なんていう懸念もあり得ます。
 もし中日のように10人が該当し、10人も持って行かれたら、二軍の試合は成り立ちません。


【想定される事項④】
 奪われる選手の人数制限もしなければ、奪われる側の球団が大きな損失をしてしまう可能性もあり得ます(特に何人も奪われて)。下手すると、二軍戦で人員不足の可能性も(3人獲得しても8人失いましたでは、二軍が成り立たなくなる可能性も)。


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 そして、この制度で難しいのが現役ドラフトに該当する選手の対象条件をどうするか?ですね。


 韓国のようにプロテクト(例えば40人とか)を設定するのか?そのプロテクトに漏れた選手の中で条件が該当する者は現役ドラフト市場に出回ることになる、とか。


 韓国の場合、支配下選手に登録可能な人数は63人ですから、その中で約6割以上をプロテクト(40人)できます。同じ比率でプロテクトするなら日本では約45人ですね。


 年数制限とかも必要と思いますが、年数が長すぎると上記①を促し、短すぎると上記②を助長しかねません。


 獲る側・獲られる側の均等性を見据えるなら、12球団全てが各々「獲ること」「獲られること」(例えば、各球団が2名(投手1,野手1)出して、各々2名持ち帰ること)とかも必要かもしれません。
 ただし、カス選手ばかり市場に出されても困りますので、そこそこの二軍選手が該当できる年数や実績等の条件を設定するとか、も必要かもしれません。


 いずれにしても、「この制度を導入したらどういう影響が生じる?効果はどれだけ生じる?」「想定される影響を低減するための対応は?」をしっかり考えた上で導入の是非を考えるべきであり、制度導入に伴う影響評価を適切に真剣に議論をせず、ただ「導入」「焦り」ばかりが先攻して、「MLBがやっているから」とか短絡的な思考で、自分たちの欲だけのために(便乗してくる「他所から買いまくりたい球団」も生じ得ます)、まともに考えずに導入してしまうということは避けるべきと思います。