下手の横好き(馬と獅子が好きです)

主に西武ライオンズ、競馬のことを主に書いています。

【雑記】「人の目(視認)の限界」と「野球」の四方山話

人の目で判断するというと、
野球の場合、審判がそうですね。


審判は自らの目、耳を駆使して、
瞬時のプレーを判定しなければなりません。


ただ、人がやることですから、
当然、判定に誤りも生じますね。


その誤審率はどの程度あるのか?


一昨年からリクエスト制度が導入されたわけですが、
そのリクエスト成功率(判定覆る率)は誤審率の参考になりますね。


一昨年、昨年のリクエスト結果については、


2018年 リクエスト全494回   成功162回(成功率33%)
2019年 リクエスト全584回   成功176回(成功率30%)
2年合計 リクエスト全1078回 成功338回(成功率31%)


リクエストに持ち込まれるというと
だいたいが際どいプレーになるわけですが、
(中には明瞭なものもあるでしょうが)
そういう際どいプレーでは
3割程度が誤審になっている
ということを示していますね。


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ところで、
投げられた球のストライク、ボールの判定
リクエスト対象外になっています。


しかし、こちらも誤審は付き物ですね。


まあ、4ボールになっても球審が気づかずに、
また打者や投手などがアピールしない限りは

そのままプレイ続行となるわけであり、
一昨年、広島の鈴木誠也が8球目で
B4S2のカウントになっても、
主審も、鈴木誠也も、与四球に気付かず、
9球目でファウルを打ち、
10球目で二塁ゴロでアウトとなったこともありました。
それも誤審といえば、大誤審、大チョンボですね。


話を戻しますと、
ボール&ストライクのカウント毎に
ストライクゾーンが変化していること自体
捕手の「フレーミング」技術も左右しますが、
「誤審があります」と言っているようなものですかね。

以前、ボストン大学の院生たちが、
メジャーリーグの過去11シーズン(2008〜2018)
400万投あまりの投球を調べたことが発表され、
興味深い結果が得られていましたね。



2018年の場合、
ボールとストライクを3万4294回誤審しており、
それは1ゲームあたりでは14回、1イニングあたりでは1.6回らしいです。


また、2ストライク時になると、
誤審率が約3割とアップする傾向も示唆されていました。


まあ、この2ストライク時の結果は、
前述したNPBのカウント別ストライクゾーンの結果
やや相反する気は否めませんが。


カウント別ストライクゾーンを見ると、
ストライク数が増えるにしたがって、
ストライクゾーンが狭まっていますから、
範囲の広い0ストライク時の方が
誤審が多くなりそうな気もしますので。


その原因はよくわかりませんが、いずれにしても、
全体で見ると、上表のとおり、
トータルで約13%と、1割+αの誤審率ですね。
ただし、経年的に見ると、
その誤審率は減少傾向にあります。


また、2018年シーズンの誤審率を見ると、
高かった審判ワースト10、10人の平均年齢は56.6歳
低かった審判ベスト10、10人の平均年齢は37.8歳
という点も興味深いです。


もちろん、経験の浅い者は
出場数の少なさから結果の精度の問題や、
経験の深い者は、
思い込みが強い(経験による奢り)があるかもしれませんが、
この結果をパッと聞いて感じる要因には、
「年齢に伴う動体視力の衰退」があることは否めませんね。


ちなみに、古い話になりますが、
昭和40年前後の頃、
「主審1試合20球誤審説」
を打ち出されていた方がいらしゃったそうです。
当時の肩書では、
東京医科歯科大学眼科教室の助教授・大島祐之氏
という方らしいです。


その説は、
次のような前提条件を基に考えられています。


①投手の投球速度は、バッテリー間18.44mを0.4秒で投げる。
 →判定する時間(ホームプレートを通過する時間)は
 1000分の1秒の規模。
②完投したことを前提とすれば、
 投手の1試合投球を130球と仮定。
③その投球総数130球のうち、
 ホームプレートの一角を通過する投球が
 20%(26球)と仮定する。


そこで、AMA(米国医学協会)が1955年に発表した
「人間の目と時間の関係」の結果を鑑みています。


その「人間の目と時間の関係」の結果とは、


1000ルックス(直射日光が差し込む部屋の窓際の明るさに相当)の照明度の場合、平常で視力1.2の人でも100分の1秒で移動する物体を判断するとき、その移動スピードに目がついていけず、実質的には視力が0.8に低下。平常で視力0.8の人なら実質的には視力が0.4に低下。
1000分の1秒で移動する直径7cmのボールを人間が見た場合視力1.2の者の実質的な視力0.3まで低下。しかも正確度、能率度は平常の視力1.2のときの60%に暴落する。また平常で視力0.8の者なら、実質的視力、正確度、能率度は20%まで失墜する。


大島氏は、条件③とAMA発表を鑑み、
平常で視力1.2の主審は、際どい投球26球のうち、
60%の16球は正しく判定されるが、
残り10球は不正確になりやすいと。


ただし、それは片方だけのチームの分であるため、
両チームを合わせれば
誤審10球×2チーム=20球を
1試合で主審が誤審する、という
「主審1試合20球誤審説」というもののようです。


結局、当たり前の話になりますが、
1000分の1秒で通過するボールの判定でその誤審率は
「人間の目の限界」と言えるわけですね。



またその大島氏は、
一塁塁審などのことも言及しています。


「一塁塁審の場合、走者の足と捕球の瞬間を同時に見ることは物理的に不可能。だから審判は一塁ベースに駆け込んでくる走者の足を目で見て、同時に一塁手のミットにおさまる捕球音を耳で捉えその両者のどちらが速かったかを、大脳で判断してからジャッジに移るという生理的順序を踏むことになる。
 しかし、生理的順序にしたって、耳から大脳へ通じる神経伝達時間は秒速30mであるのに比べ、目の場合は、耳より多少ずれて遅れる。だからプレーそのものは全く同時だとしても、耳でとらえた捕球音の方が目で見る走者の足より優先しがちになりやすい。つまり、プレーが同時でも、人間の官能力がセーフより、アウトにしがちになりやすい」


これは古い指摘であり、人は進化もするとともに、
最近は動体視力等のトレーニングなど技術向上もありますが、
そうは言っても、人間の生態的特性でもありますから、
今でも通じるところがある指摘とも言えますね。


まあ、最近、ストライク&ボールの判定などは、
“電子球審”による自動ストライク判定システム
とかも技術向上が進んでおり、
実戦でも試されており、
MLBでも導入への道が開かれつつあります。


もちろん、導入にあたって色々課題は残すでしょうが、
(審判のリストラ、審判が人だから楽しいという意見等)
技術面の観点からは、
その導入可能の日もそう遠くなく、
結構、近い将来に実現しそうですね。


それが実現すれば、
だいぶ判定精度の改善も期待できますね。


ある意味、審判の方は、
ロボット化という道筋ですけど、
「誤審低減」の策は十分存在するわけであり、
それが実現化すれば、だいぶ改善されるでしょう。


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しかし、プレーしている選手の方は、さすがに
人工AIロボ化というわけにはいきませんね。
100年後には鉄腕アトムやドラえもんのような
ロボットが、機械化人間がプレーしているかもしれませんが。。。


審判の場合、
投げられた球の軌道を捕手が捕球するまで目視するわけですが、
打者の場合、
その軌道を目視で捉えて、打ち込まなければなりませんから、
当然ながら、打者は審判以上の動体視力が求められますね


でも、どんなに動体視力が優れている選手でも、
打者がリリースされてから
バットでインパクト(またはホームベースを通過)するまでの間の
投球の全軌道を見失わず目視で捉えることは不可能ですね。


打者の眼球運動は、ホームベースの2.4~4.6m手前で停止している
つまり、インパクト直前からボールが見えていない
という研究報告があります(Hubbard&Seng、1954)


投手が投げる球について、
観客席やベンチなど遠いところから見るとき、
視角はそう広くはありませんが、
打席に立って、目前の球の軌道を追うには
その視角は広く、移動速度が速くなります。


通常の人間の目で追うことができる視角の角速度
1秒当たり70度程度と言われています。
動体視力の優れた選手では、
1秒当たり120度程度と言われています。


しかし、打者の目前を
1000分の1秒の球速移動時間の中で通過していきますから、
1秒当たり500度程度の角速度で追わねばなりません。


しかも、打ち返すわけですから、
インパクトする0.2秒前にはスイングを開始しなければなりません。


確かに昔、川上哲治氏が「ボールが止まって見えた」
と仰られていた言葉が有名ですが、
それは科学的に言えば、錯覚にすぎず、
無意識にでもどこかの瞬時で球を見失っている

と思われます。


球の軌道を目視するのは、
①リリースされてからずっと追って
 最後の何mかを見失っているか?
②最初の数mだけ目で追って、
 すぐホームプレート上に視線を移して再視認するか?
があるわけですが、
さすがに
最初から最後までの全軌道を目視で追うのは不可能です。


しかし、打者は、その失った瞬時の空白部分を
脳内で補完しているところがあります。
それが「読み」ですね。


直感にせよ、理論にせよ、決め打ちするにせよ、
やり方は個々で異なりますが、
投げられる「次の一球がなんなのか?」
「次の球はどのくらい落ちるのか?」などを
スイング前に必ず読んでいます。


投手からリリースされた球が
ホームベースを通過するまでに、
どのような軌道を描くのか?
そのとき、
どのタイミングでバットを振るのか?
それを必ず予測しています。


よく「ボールが浮き上がった」などを聞きますが、
それは「読み」とその結果により、
脳内でその抜けている部分を補完しているにすぎません。


特に人の目は、動くものを見るとき、
部分、部分でブラインドスポット(見えぬ部分)が生じます。
それを動いているように見えるのは、
そのブラインドスポットを
見えている部分で脳名を補っているからですね。
(点が線になる補完のようなもの)


例えば、その感覚は、
映画は映像が動いているように見えるのと似た現象であります。
実際、映画は静止画のコマをつなぎ合わせているものですが、
その静止画のコマ間を脳内で補完しているから、
動いたように見えているわけですね。


話を戻しますと、
打者は、ボールの速度をベースにして
ボールの落下具合等を推測します。
もし150km/hのボールを140km/hと間違って判断すれば、
ボールは、
思った以上に早く到達し、思ったほど落下せず、
振り遅れたり、空振りしたりと、打てませんね。


もちろん、
中には『「無心」になって打つ』ということはあります。


とはいえ、人間ですから、
全く頭の中を「空っぽ」にすることはできません。
たとえ、意識が飛んでいても、
生きている限りは、脳内では何かを感じていますし。


その「無心」というのは、
「何が何でも打ってやろう!」とか
「ここで打てなかったらどうしよう」などの邪念を取り除くように
余計なことを除いたニュートラルの状態にすることですね。


そのとき、
意識的に「次の一球がなんなのか?」を読まないことも
含まれることもあるでしょう。
しかし、それでも打てるということは、
無意識のうちに(直観的に)
「次の一球がなんなのか?」

「次の球はどのくらい落ちるのか?」などを読んでいる
ということですね。


意識して、無意識にして、どちらにおいても、
バットを振る前の「読み」無しでは
間に合わず振り遅れます。

直径7cmの球をその超高速で打つのは難儀です。


あと、よくありがちなのが、
速いストレートを見据えながら、
遅い変化球の場合は修正してそれに合わせて打っていく
という戦術ですね。


これは理にかなっており、
逆に遅い変化球を見据えていた場合、
速いストレートが来たら、
修正する時間は足らずまず間に合いません。
だから、変化球を待っていて、
ど真ん中のストレートに手が出ず見逃すことは多々ありますね。


もちろん、速いストレートに照準を合わせながら、
変化球が来るとき、球速が遅いと言っても、
そんなのんびりした話ではないので、
ある程度、変化球も頭の中で見据えておかないと、
間に合いませんね。


それだけに、やり方は個々でバラバラでしょうが、
打者にとって事前の「読み」は大事になってきます。


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ただし、当然ながら
その打者の「読み」はハズれることも多いですね。


ある意味、その「読み」のハズれは、
打者から見れば「読みの不確実性」となるわけですが、
当然、その「読みの不確実性」が大きければ大きいほど
凡退しやすくなりますね。
だから、打者側から見れば、
その不確実性を極力小さくしたい
ですね。


そのためには、
直感で読むタイプは直観力を研ぎ澄ましたいですけど、
やはり「その軌道の経験度」は重要になりますね。


それでも「未対戦・未経験」
「見たことが無い」も多々あるわけですが、
最近は、VR技術等も進化していますから、
対戦の乏しい投手の球の軌道を
VR等を活用しながら事前に見て
視角的に認識しておくことも効果的な準備になりますね。


一方、バッテリー側から見れば、
打たれないようにするためには、
打者を凡退に仕留めていくには、
相手打者の読みの不確実性を
大きくしたいところですね。


そのため、打者とバッテリーの
その不確実性の大小を決める勝負とも言えます。


ただし、
打者とバッテリー、どちらが基本的に優位か?
と言えば、
そもそも、何を投げるか?を
決めることができる主導権は、
バッテリーにある
のですから、
バッテリーの方が基本的に優位のはずなんですよね。


だから、打者から見れば、
打率だって3割、出塁率だって4割もあれば上々
という世界であるわけですから、
バッテリーから見れば、
打てぬ率が7割、出塁させぬ率が6割という計算
ですね。


もちろん、打たれない状態を続けるには、
単純に打者27人で、0.6の27乗と超低確率になり
バッテリーから見れば、
その試合のどこかで打ち込まれる確率は高いわけですが、
そりゃ、どこかで打たれる、四死球を与えることはあります


確かに、格上の打者や苦手な打者を相手にする場合、
打率や出塁率が高まることは十分あり得ますね。
十亀だって、鷹の松田には
通算打率が5割以上あったりしますから。


当然、打たれないようにしよう、四死球を出さないようにしよう
と心がけて配慮しながら投げることは大事で
す。


だけど、その打者との1対1の対決であれば、
基本的にバッテリーの方が打者より優位なんですから、
そういう意識を持ちながら投げれば
打たれまい、四死球を出さまいということを
意識しすぎることはないし、
ましてや怖がることはありませんね。


まあ、昔、1971年に
米国でキャンプをしていたロッテがアスレチックと
3球ボールで出塁(今の四球扱い)ルール
を実験的に取り入れた練習試合をしたそうで、
結果としては、ロッテが12-6で勝ったようですが、
両チーム合計の安打数が20本、与三球出塁も20個も
あったみたいで、ブーイングの嵐だったとか。。。


ボールカウントは最初9つから始まって
その後、1つずつ減りながら変化し、
1889年に四球で収まってからは今に至るわけで
それがさらにもう1つ減らせば、
打者は今より有利になるわけですが


話は今に戻しまして、
もちろん、投手側も打者が怖いものは怖いですが、
幻影でもいいから、自分に暗示をかけてもいいから、
メンタル面に弱い投手などにおいては、
「俺らバッテリーの方が優位なんだ」という
思考を思い込むのも一手
と思います。


今日は筋を決めずに思いつきでダラダラと
脈略無く流されながら書いたため、
話の方向性がよくわからん方向に着地してすみません。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


※参考文献
「前述のWeb」参照
「野球の物理学」(1966 近藤唯之)
「一球の心理学」(2008 M.スタドラー(長谷川滋利訳))
「新時代の野球データ論 冨合ボール革命のメカニズム」
 (2019 Baseball Geeks編集部)
「プロ野球記録大鑑〈昭和11年‐平成4年〉」
 (1993 宇佐美 徹也)