下手の横好き(馬と獅子が好きです)

主に西武ライオンズ、競馬のことを主に書いています。

夏季における「屋内球場」と「屋外球場」の成績傾向の違い(メラドは屋内球場の仲間外れになっちゃいますけど。。。)

先日、物理的な話を投稿させていただきました。


今日もその手の話になりますが、
とても興味深いコラムがありましたので、
紹介させていただきます。


1.02Essence of Baseballのコラム(著:竹下弘道氏)です。


【季節が成績に与える影響の考察 ~屋外球場編~】

【季節が成績に与える影響の考察 ~屋内球場編~】


成績が季節に応じて変動するという傾向があり、
例えば、NPB(2005~2019年)において、
月毎の防御率と失点率を全般的な平均で見ると、
夏季(7~8月)にやや高まってくる傾向があります。


それを屋外球場屋内球場(ドーム)
どのように差異があるか?を考察しています。


屋外と屋内の違いについては、
外気と触れているか?否か?で区分けしています。


このため、
メラドは、非密閉状態で外気と接していますので、
屋内球場(ドーム)から仲間外れにされ、
屋内球場(ドーム)は、
札幌D、東京D、ナゴヤD、京セラD、ペイペイDの5球場

を対象とし、それ以外の7球場は屋外球場として扱っています。


まあ、メラドの場合、湿度も増して外気より蒸し暑いですが、
屋外球場の気温は外気と同じとして、考えています。


詳細は、前述のURLを参照ください。


それらからグラフをピックアップすると、
(左側:屋外球場、右側:屋内(ドーム)球場)
屋外球場と屋内球場(ドーム)でかなり差があります。


簡単にまとめると、
失点率、防御率については、4月と比して
屋外球場の方が
夏季の方が高くなっており、8月にピークを迎えています。
屋内球場の方が
経月に連れて低下傾向にあり、夏季に悪くなってません。


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2段目のグラフについては、
打席を三振、四死球、打球と分けて、
その割合について、
4月を基準としてその変化分(4月との差分)を示したものです。


その「打球」というのは、
アウト&セーフに限らず、打った割合を示しており、
「打数から三振数を差し引いたもの」になります。


これを見ると、
四死球屋外球場が4月より減少していますが、
屋内球場が横這い傾向です。


しかし、三振は4月よりどちらも増えていますけど、
屋外球場は横這い傾向に近く、屋内球場は増えており
4月からの増加程度は、「屋内>屋外」の傾向にあります。


その一方、打球の方は、
屋外球場は横這い傾向、またはやや増加にある反面、
屋内球場は大きく減少する傾向にあり、
4月からの増加程度は、「屋内<屋外」の傾向にあります。


すなわち、夏季になると、
屋外の方は、屋内と比して、
三振が奪いにくく、打球が増えやすい(打たれやすい)
という傾向の可能性が伺えます。


逆を言えば、
屋内の方は、屋外と比して
三振が奪いやすく、打球が減りやすい(打たれにくいい)


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3段目のグラフは、
打球による得点価値(wOBA)の経月変化図を、
4段目のグラフは、
打球の内訳割合に関して
4月を基準としてその変化分(4月との差分)
を示したものです。
(内訳:単打、二塁打、三塁打、本塁打、アウト)


打球による得点価値(wOBA)については、
屋外球場の方が
夏季の方が高くなっており、8月にピークを迎えています。

屋内球場の方が
横這い傾向にあり、夏季に悪くなってません。


次に打球の内訳割合については、4月と比して
屋内球場の方が
どれも概ね横這い傾向にあります。

一方、屋外球場の方が
夏季になると、アウトが減っており、

単打、二塁打、本塁打が増えていますね。


夏になっての変化については、
やはり一番大きく違うのが『気温の上昇』ですね。


屋内(ドーム)球場の場合、
春冬は20℃前後、夏は25~28℃程度で調整されます。
春から夏にかけて、
概ね5~10℃弱の気温上昇と考えられます。
※札幌Dの場合:夏は25℃、冬は20℃
※ペイペイDの場合、
 東日本大震災で節電したときの2011年の情報ですが、
 このとき、夏は28℃で調整


一方、屋外球場(外気)の方は、
春から夏にかけて、
概ね15℃くらい、またはそれ以上は気温上昇しますね。


上記の記事によると、屋外球場の場合、
それら所在市の月平均気温(外気温)
打球による得点価値(wOBA)の関係を見ると、
相関係数R=0.85と、それなりの相関関係が見られたそうです。


すなわち、
気温と得点(逆を言えば失点)の相関性が伺えそうであり、
『気温が上昇するほど、得点(失点)しやすい』
という可能性が伺えそうです。


そこに、気温が上昇しやすい屋外球場
上昇しても、そこまで高くならない屋内(ドーム)球場
差異が生じるのも、気温に関係はありそうですね。


まあ、単純に、
暑くなれば、投手がしんどくなりやすいし、
守備の方も、しんどくなっていくから、

打撃よりも暑い外に出ている時間が長い投手、守備の影響により
「得点(失点)しやすい」というのは否めなさそうです。


大昔の文献(「野球の物理学」(1966 近藤唯之))ですが、
不快指数(気温、湿度から算定する指標)に基づき、
暑くなるとエラーをしやすい?を検証しており、
昭和37~39年の後楽園球場、神宮球場、東京球場の夏季
における不快指数とエラーを調べています。
 ※昭和39年は7月のみ。他は7~8月
 ※昭和39年のみ川崎球場も含む


それによると、
1試合の平均エラー数は、
不快指数が80未満の場合が1.30個
不快指数が80以上の場合が2.45個であり、
暑さの不快指数が高いとエラーが増える可能性
を示唆していました。


ただ、最初に挙げた上記記事では、
物理的な観点から話を展開しています。


一般的に、気温が上昇すると
その空気の密度は小さくなります(軽くなります)。


その密度差により
冷たい空気は下層にたまりやすいけど、
暖かい空気は上層にたまりやすいですね。


そこで空気抵抗に着目すると、
一般的に、空気密度が小さくなると、
空気抵抗も小さくなりやすくなります。


すなわち、
「気温上昇→空気密度低下→空気抵抗小」
という関係ですね。


最初に挙げた上記記事によると、
屋外球場の場合、4月から8月にかけて
打球が本塁打になる割合は20%上昇したそうです(①)


上記記事にも例示されていた
Alan Nathanによると、
「1F(0.56℃)の気温上昇により
 空気抵抗が減少して、本塁打は1%増える」
という知見があるようで、
春から夏にかけて15℃気温が上昇すれば、
本塁打は約27%増(15℃÷0.56℃)という計算になります。
14℃上昇なら本塁打が25%増ですね。


上記①は、Nathan論ほど増えてませんが、
類似したレベル(規模)で増加している、と解釈もできます。
(2~3割の増加という解釈で)


まあ、夏季はナイターも多いので、
もう少し気温差は少なくなる可能性もありますが。


すなわち、これは
「気温上昇→空気密度低下→空気抵抗小」の関係から
「打球が飛びやすい」となっている可能性が伺えます。


「ベースボールの物理学」(ロバート・アデア著・中村和幸訳)
によると、前提(目的)がちょっと異なっていますが、
一般的に、摂氏21度でボールを114m飛ばすスイングで
5.5度上昇すると、飛距離が約1.8m増加する、と言われてます。
またボールの弾性も変わってきます。
(気温が高いと飛びやすくなる)


打球速度が大きければ(抵抗で落ちにくければ)
打球は飛びますね。


下図は「新時代の野球データ論 冨合ボール革命のメカニズム」
(2019 Baseball Geeks編集部)に掲載されている
「打球速度」と安打各種の発生割合であり、
本塁打を放つには、
ある程度、打球速度が無いと打てぬことがわかりますね。


ただし、飛距離は、
「空気抵抗が少ない→打球速度が落ちない」ことで伸びますが、
飛距離を伸ばそうとしても、
「打球速度が速ければ良い」というものでもないところはありますね。


打球速度が速くても、
バックスピン(打球の回転数)が利いていないと
打球はマグナス力(揚力)が不足して飛ばず、
回転数も打球角度によって異なりますね。


基本的に回転数と打球の水平速度は
トレードオフの関係にもあります。


Nathan(2012)によると、
〇打球の角度が大きくなると回転数は増加する
〇しかし角度が大きくなると水平速度は小さくなる
〇それ故に、回転数と打球の水平速度は
 トレードオフの関係にある

というものです。


それを中島・桜井(2019)が検証しています。
下図は、横軸が打球角度であり、
上段図の縦軸は、打球の水平速度
下段図の縦軸は、打球の回転数

を示しています。


前述のNathan(2012)の理論が再現されています。

※「野球における投球の回転が打球の回転に及ぼす影響」
  (2019、中島大貴・桜井伸二)より


もちろん、回転数ばかりあっても、
打球は速度が無ければ飛びませんね。


だから、飛距離を伸ばすにおいても、
それなりの打球速度と、
それなりの回転数を得る打球角度の解があるわけですね。


下図は「新時代の野球データ論 冨合ボール革命のメカニズム」
(2019 Baseball Geeks編集部)に掲載されている
横軸「打球角度」(ボール中心とスイング軌道の差)
右の縦軸「回転速度」と左の縦軸「打球速度」の関係を示した図です。


本書に示されているように
Nathan(2015)によると、ストレートを打つ場合、
ボール中心の6mm下を19℃上向きのスイング軌道でインパクトすると、
打球に角度がつき、回転数も増加し、飛距離が最大化される
と報告されているようです。


最近では、打球速度と打球角度を組み合わせて
打球が飛ぶ角度(バレルゾーン)とかもありますね。


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話はだいぶ逸れてしまったので、戻しますと、
屋外球場の場合、
夏季の三振が4月より増えていない(横這い)であることも
最初の記事におけるグラフからも伺えます。


その理由としては、
「気温上昇→空気抵抗小→マグナス力(揚力)減→変化量減」
という関係ですね。


ただし、空気抵抗が小さくなりますから、理論上は
球速は落ちにくくなり、高速化しやすくなるはずです。


最初の記事でも挙げられているデータであり、
これは屋外球場、屋内球場の区分けが無いのが残念ですけど、
ストレートの平均球速は、
4月よりも夏季の方が速い傾向があるようです。


その理由としては、最初の記事も挙げられているように、
投手もシーズン1年間で状態を維持したいですから、
開幕時は仕上げたとしても100%までは持って行かず、
徐々に実戦とともに状態が上がっていく、という説はあり得ますね。


そのため、
「暑さが投手のコンディションを悪化させる」説を前提考えれば、
夏季は球速が落ちても不思議ではないが、
実際は球速が落ちていないので、
「暑さばかりが悪化させる」とも言いにくい面があることと
(暑さが顕著な悪影響を与えている形跡は読み取れないこと)
が挙げられています。


ただ、
7月以降が横這い傾向(球速がアップしていない)ことから、
(2018年は7月をピークにして下降線傾向)
猛暑に伴う疲れが残って、
その後(8月以降)へ影響している可能性は否定できないかもしれませんが。


でも、球速アップの理由として、
「高温化→空気抵抗小→球速アップ(高速化)」の関係
もあり得る可能性はありますね。


これらにより、気温が上がることにより
ホップ変化量の減少は三振を減らし、
その反面、球速アップにより三振を増やす、と
相反関係が生じますね。


しかし、変化量と球速、
三振への影響はどちらは大きいか?
というと、
Nathanによると、
変化量の方が大きい(支配的である)ようです。


それ故に、屋外球場は、屋内球場よりも
気温が上昇しやすい分、
「マグナス力(揚力)低下→変化量減少→三振減
という可能性が伺えそうです。


しかも、前述したように、
屋外球場は、屋内球場よりも
「空気抵抗低下→打球飛びやすいの可能性も伺えるので、


夏場においては、
投手陣にとって、屋外球場では、
屋内(ドーム)球場より不利になる
打撃陣にとって、屋外球場では、
屋内(ドーム)球場より有利になる


まあ、獅子にとっては、
メラドは、上記で言うドームじゃないので
もともとからあるチーム特性(投弱打強)も加味すれば、
その傾向は顕著化しやすくなる懸念は残りますね。


ただし、上記の話も平均的な傾向であり、
個別で見ていくと、そのときの状態や相性等もあるから、
「そのまま傾向がいつも当てはまる」とは言い難い面は残りますね。


ちなみに、試合を屋外・屋内球場で区分けはしていませんが、
下図は2018~2019年の西武の月別防御率です。
一昨年とかは8月が、昨年とかは7月が
4月と比すると、同程度で済んでいますが、
一昨年は7月(6月がピークですけど)が、
昨年は8月が良好ではありませんね。

※まあ昨年の8月の悪さは暑さだけではないでしょうが。
※昨夏は、比較的、そこまで暑くない日もあったから。


まあ、昨年の9月以外は、
全般的に見て
「4点台を下回らず『良好でない』」
という『レベルの低さ』の方が問題なんですけど。




こういう視点もあるということで。
長々とお読みいただき、ありがとうございました。